てんぷら蕎麦
その日はなぜか、てんぷら蕎麦が食べたかった
こういうときに限って
蕎麦屋がみつからない
しかたない
あそこのチェ-ンにいくか
そこで
出てきたのがこの蕎麦
おふくろは
戦地帰りの10歳も年上の男と結婚した
田舎の娘が
没落貴族に嫁いだのだから
プライドだけ高い姑との仲がいいわけはない
幼い僕を自転車にのせ
ちょくちょく実家まで帰っていた
帰り道寄るのか
駅前の蕎麦屋
なにを食べるのか聞かれると
僕の答えはいつでも「ラ-メン」
蕎麦屋のラ-メンを食べるのだ
お袋が頼むのはいつでもてんぷら蕎麦
実家の父親からもらった小遣いで支払いを済ませる
てんぷら蕎麦は、あのころのお袋にとってごちそうだったに違いない
あのころからもう半世紀はたってしまい
みんな鬼籍にはいってしまった
時々
寒い日に
天ぷら蕎麦がたべたくなるのだ
寒中に蕎麦すする母の目になみだ 自作
しかし別盛りでてできたこのエビ、小さかったな~