炭のある風景
清少納言の「枕草子」の一節である
寒い朝、宮中では女官たちが、炭を熾し、廊下を急いで渡っていく、冷え込んだ空気感がそこここに溢れている文章である。
炭は古くから宮中で用いられていたが
都の町人達が使い始めるのは、室町時代になってからである
全国に広まるのは明治になってから
炭を焼く長き煙の元にあり 草田男
いまは炭が生活の風景からきえてしまった
神楽坂に「伊勢籐」という飲み屋がある
ここの店主の仕事は、夏でも、炭火のいろり端に座り、燗をつけること
席につくと最初にきかれるのは、お酒の温度
炭火の脇、灰に切られた、穴に、錫のちろりを埋め込む
巷のホルモン屋さんでは
七輪に炭という店も未だ生き残っている
写真はそのお店
見て飽きぬ肉焼き上げる炭火かな 自作